- 2015-7-5
- Update 2022-3-21
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ホイールナットの締め付け過ぎ緩みすぎはボルト破損や事故につながります!
みなさんこんにちは!ミュンヘンのWeb担当mak utsunomiya(@munchen_stil)です!今回の記事は、ホイールナットの締め付けトルクって言うかなり地味な内容になっています^^
ま、地味とは言っても車で唯一路面と接地しているのがタイヤです。そのタイヤを正規の状態に保つのがホイールの大切な役割です!
つまりは、タイヤがなければどれだけ優れたエンジンやブレーキがあっても、その性能を発揮する事はできません。よって地味とは言っても最も重要なタイヤをはめ込んでいるホイールの正しい取り付け方法って無視できない要素なのです。
地味なようで地味な作業ではないのです!
トラブルになりそうな事例を見ながら解説したいと思います。因みに、この記事の解説はあくまで簡易的な内容になってますので、後述しますがトルクレンチがあるに越した事はないという事をあらかじめご指摘させていただきます。
※ 本内容はあくまで規定トルク付近での取り付け内容となっていますので、この記事はあくまで参考としてご覧下さい。この記事を参照にし、ホイールの脱落やボルトの破損などが起こった場合には当店は一切の責任を負う事はできません。
よって、いかなる事故などが起こっても当店では責任を持てませんので、自信がない方は信頼あるお店で作業してもらうようにしましょう!
それほど、ホイールナットの取り付けは簡単そうでいて難しいものなのです!
力まかせでホイールナット締め付けてませんか?
この画像のように力任せにホイールナットを締め付けていませんか?タイヤやホイールは車の荷重を支える重要な役割を担っています。
そういった性格上緩むとやばいといった感覚が生まれます。なればこそ強く締め付ける程良いといった間違った認識を持っている方も多いようです。
実際にインパクトレンチの最大トルクでも外れにくいナットを何度も見ています。でもこれってボルトやホイールの座面及び、ハブボルトまで破損してしまう事態に繋がってしまうんですよね。
これってインパクトレンチのトルクも知っておく必要があるんですね。締め付け過ぎによるハブボルトの破損は数々見てきています。整備工場だろうがディーラーさんであろうが、こういった事は起こりえる事なんです。
決して力任せに締め付けないで下さいね!もし、ハブボルトを破損させてしまったなら下記リンクから打ち換え方法をご確認下さい!
壊れたハブボルトはこうなります!
⇒ ハブボルト交換方法!ボルト破損での交換やロングボルトにする方法を授けましょう!
正しいナットの締め方
正しいホイールナットの締め付け方と言うのは実はかなり奥が深いのです。そして、整備工場によって違います。インパクトレンチだけで締め付ける所や、トルクレンチを使って規定のトルクで締め付ける所様々あります。
これを言っては元も子もありませんが、インパクトである程度締めて・・・
トルクレンチで規定値で締めこむ。当店でもそうやってますしそれが間違いでもありません。また、十字レンチで絞めこんで規定トルクで絞めこむ。この内容でトラブルが起こった事例もありません。(間違えればホイールごと吹っ飛び大惨事になります。間違いなく。)
ただ、インパクトレンチや手ルクレンチで思いっきり締めれば良いって物ではないことだけは覚えておいて下さい。
ホイールナット締め付け規定トルクとは?
車種やホイールによって多少の誤差はありますが、おおよその規定トルクは決まっています。それが以下の数値になります。
- 軽 90N・m
- 普通車 105N・m
参考までに、KTCさんのホイール専用トルクレンチの数値はこうなっています。当店ではおおよそ軽でも普通車でも110N・m付近でトルク管理してます。
- 85N・m
- 103N・m
- 108N・m
外車のナットの締め付けトルクは当店でも把握してませんが、このトルクで支障があった事例はありません。
因みに当店でも110N・m付近で固定してホイールナットを締め付けています。数値にしてもいまいち分かり難いですが、おおよその目安として参考にしてみて下さい。
ただ、問題なのはこれをDIYでどうやって把握するのかですよね^^トルクレンチを持ってるならともかく、大多数の方はトルクレンチなんて持ってません。
じゃあどうやって規定トルクで締め付けるの?って疑問が浮かぶのは当然ですよね。それには以下の数式を理解する必要があります。
力のモーメントを知ってれば!
ナットを回すのに用いるのは“力のモーメント”。数式はありますが、私が数字に弱いので簡単に説明します^^回転させたいものから、1m伸びた棒の先に10kgの錘を乗せると、回転させたいものに10kgf・m(おおよそ10N・m)のトルクがかかります。
今回の場合の回したいものはホイールナットになりますね^^
因みにニュートンメートルとは?
- 1kgf・m = 1N・m × 9.806652
kgf・mはトルクを表す単位で、上記の数式でN・m(ニュートンメートル)が求められます。現在はkgfではなくN・m(ニュートンメートル)で表記されるようになっていますね。
DIYで規定トルクでホイールナットを締め付けるにはどうする?
じゃあそれを知ったところで、ホイールナットを規定トルクで締め付けるって事が出来るのかって事になりますが、これがある道具を使えば出来るのです^^
それが、車載レンチなのです!
車載レンチはおおよそ25cmある!そこに意味がある!
画像のように車載レンチはおよそ25cmあります。これが実はかなり良く考えられていて、自動車メーカーはスゲ~な~ってなります。
これがお店にざっくばらんにおいてある中にあった、何らかの車種の工具^^中心から最後尾まで約25cmです。
ナットに車載レンチをかけ25cmのところに50kgの重さを乗せると、どうなるでしょう?
- 0.25m×50kgf=12.5kgf・m
- 12.5kgf・m×9.806652=122.5N・m
つまり、ボルトの締め付けトルクは122.5N・mになります。実際には最後端部では握れないので、22~23cmの所に荷重がかかるのではないかと思います。
それを鑑みて。
- 0.22m×50kg=11kgf・m
- 11kgf・m×1N・m(9.806652)=107N・m
ん~すばらしい!ほぼ規定のトルクがかかるではないですか!車載工具は何も出来ないと思っている方も多いと思いますが、実際はすごく良く考えられているのですよね!
ご自身の体重を考えると、後は車載レンチのどこを握ると規定トルク付近で締め付けが出来るのか計算できますね^^
早速ホイールナットを取り付けて見ましょう!
上記の計算である程度の規定のトルクが出せるとわかれば、早速実践です。その前にホイールナットは締め付ける順番がありますので、以下の画像を参考にしてみて下さい。
ナット締め付けの順番を間違えるとホイールが正確な位置で締めこめなくなります!
ホイールナットは一箇所をいきなり締め付けると、ホイールが斜めに取り付いたりするので、数回にわけ順番に、そして均等に締め付けていく事が重要です。下記に示すようにホイールナットは均等に締め付けないとホイールのガタの原因になります。
インパクトレンチを使っていても一か所を一気に締め付ける事はしません。
下記の順番通りに締め付けるのはともかく、数回に分けトルクをかけていきます。経験者なら分かると思いますが、数回に分けて締め付けてるとホイールが自然と既定の位置に締め付けられてるのが分かると思います。
万が一斜めに取り付いていると、走行中のガタの原因になりますし、そのまま走行していたらホイールが脱落する事も考えられます。簡単な作業のようですが、慎重に作業していきましょう。
締め付ける順番って重要なんですよ!
4穴ホイールのナット締め付けの順番
画像の順番に対角線に沿って締め付けていきます。一気に一箇所を締め付けないように!
5穴ホイールナット締め付けの順番
星型に締め付けていくのが基本です。ここでも一気に一箇所を締め付けないように、何度かに分けて作業しましょう。
6穴ホイールなど特殊なものもありますが、なるべく対角線上に締め付けるようにしましょう^^
今回はクラウンで車載レンチの優秀さを実践してみます!
クラウンの車載レンチも計測してみると25cmでした。先の平らになった部分はジャッキを上げるときに差し込む部分なので、長さとして入れていません。
全ての車種が25cmかどうかはわかりませんが、おおよそ、その位の長さと考えて良いと思います。実際にご自身の車載レンチがどれ位の長さか計測しておくのも良いかもしれませんね^^
トヨタ純正のナットは特殊な形状です
このあたりは、トヨタ車オーナーさんは気をつけておきたいところです。ナットの先が、少し突起していて、この部分がホイールの穴にかっちりはまる仕組みになっています。
ま、この形状はトヨタ車だけには限りませんが・・・。
わかり易いように裏からはめてみた画像ですが、穴とナットの突起部分がきっちりはまるような仕組みになっているのがわかると思います。
ホイールを組み付ける際に少し面倒ですが、ズレ防止などに一役買っていますね。
ホイールを組み付ける時になるべくセンターを出しておく
センターと言ってもAKBではありません・・・。このようにずれているとナットの突起部分が穴にはまらず、ホイールの座面に乗ってしまいます。
そのまま組み付けると座面の損傷が起きるばかりか、走行中のホイール脱落に繋がります。
なるべくホイールの穴とハブボルトのセンターを出しておきましょう。ま、ナット締め付け時に微調整は出来るのでそこまで神経質になる必要はありませんが。
ナットは指が入る所までは手で閉めるが基本
いきなり十字レンチやトルクレンチにナットを入れて強引にねじ込んでいる方もいます。ホイールの形状によっては指が入りにくいので気持ちはわからないでもないですが、いきなり工具を使うと斜めにボルトが入ってても軽い力で回っていくので、ねじ山を壊している感覚に気がつき難いのです。
出来れば指が入る所までは手締めで行うのが理想ですね。もし、ホイール穴が狭すぎて指すら入らないなら、ソケットだけを使って正確に締めこんでいきましょう。
ソケットを使えば奥まで完全にナットを入れる事が出来ますし、もし持っているなら使わない手はありません^^
手やソケットで完全に奥に届かす
上記で記述したように、締め付けの順番はこの段階から実践して下さい。この段階ではそれ程トルクがかかるわけではないですが、くせにしておいた方が良いでしょうね。
ソケットを使えば簡単に奥まで締め込む事が出来ますが、もし持っていなければ車載レンチで締め込んでいきましょう。グリグリ回していくとこれ以上入らないなと言う感覚がわかると思います。
ホイールとハブの隙間を確認
テーパー状になっているごく普通のナットなら、普通に締め込んでいくだけで均等に締め付けれるようになっていますが、トヨタ車のように特殊な形状になっているナットは、センターがしっかり出ていないと正規の位置が出ない場合があります。
ハブとホイールの隙間を確認してみて下さい。しっかりはまっていないならこの間にかなりの隙間が出来ているはずです。
共回りするまでねじ込む
Youtube全盛の時代にgif画像を使う私をお許し下さい(笑)FR車の場合はジャッキアップしてると、ブレーキが効いていない為、フロントナットが完全に奥まで当たると、画像のようにレンチと共にホイールが回ります。
FF車のフロントやリアは、サイドブレーキがかかっているので共回りしませんが、FR車のフロントはブレーキがフリーになっているのでこういった現象が起こります。
この状態でも、完全に位置が出ているならジャッキを下ろしタイヤを地面と設置させてトルクをかければ良いのですが、それでは心配があるなら、ジャッキアップしている状態で瞬間的にレンチを回しトルクをかけます。
知人や友達がいるならブレーキを強めに踏んでもらってから行うと供回りが防げますね^^
瞬発力が試されますが、やっておいた方が後々の安心感に繋がりますし、これをやったからと言って規定値以上にトルクがかかることはありません。
またレンチを廻す反対の手で軽くタイヤの回転を押さえてやるとやり易いでしょう。
ただし、インパクトレンチのスピード以上に瞬発力がある方はやめておきましょう^^まず、そんな人はいませんが^^
キュッっていう感じで回してあげれば良いでしょう。この後ジャッキを下ろしタイヤと路面を接地し、規定トルクをかけてあげます。
規定トルクを出すためにレンチを持つ位置を確認する
上記の数式で、レンチを握る位置と体重(荷重)で、規定トルクを出す計算式を書いていますが50kgの体重と仮定しての計算式です。
私は、およそ60kgあるので少し短めに握ってみました。なるべく正確に出したいなら、体重と車載レンチを握る位置を計算式に当てはめて出してみましょう。
筋力は関係ありません
ネット上では、体重と筋力両方を加味しないといけないといった意見も見受けられますが筋力は関係ありません。要はレンチを持つ位置と荷重(体重)を加味すれば良いだけです。
仮に体重100kgならレンチの中心から11cmの位置に全体重をかければおおよその規定トルクが出ます。
- 0.11m×100kg=11kgf・m
- 11kgf・m×1N・m(9.806652)=107N・m
こうなります。これに筋力を加えればトルクをかけすぎになります。ご自身の体重を把握しておく必要がありますね^^
こうやると体重をかけれるよ!
レンチをしっかりナットにかけ、体重を加味しナット中心からの位置を割り出し、腕をつっぱったまま体重をかけるだけ。グイグイ押さないでよろしい!
ギューって体重を乗せて、体が浮きそうな位の感覚です。これでほぼ規定トルクに達します。筋力を使ってグイッと締めてはいけません。
規定トルク以上にナットが締まってしまいますよ!
因みに、実験後トルクレンチで計測するとボルト1/3の回転程度でカチッとクビを振りました。ほぼ、規定トルクがかかっているということですね。これくらいなら全然許容範囲ですね^^
もし心配なら、ホイールの違和感を確認しながらゆっくりと数キロ走行して、もう一度同じように荷重をかけてナットを締めてみてください。
注意点
ホイールナットの締め付けトルクはおおむね書いておきましたが、これが社外ホイールや車種により若干違う事は言うまでもありません。
上記の解説はあくまで”手締め”での大方のトルク管理方法です。トルクレンチは今やホームセンターやカー用品店でも安価で手に入るものとなっています。
万が一事故につながったり、ボルトやホイールの破損に比べればはるかに安い買い物です。できればしっかりしたトルク管理をしたいものです。
また、規定トルクがわからなければメーカーに問い合わせる必要もあります。
上記の作業での事故は当店では一切の責任を持てませんので、あくまで自己管理という事でご了承ください。ただ、知っておいて損はない知識ではあります。
まとめ
たかがホイール、されどホイール。車は路面と接地している部分はタイヤだけです。これが如何に重要な事か知っておく必要があります。
間違ったトルク管理で、ホイールが脱落したなんて笑い話ではすまなくなります。
トルク管理に自信がなければ、トルク管理をしっかり行っている整備工場やトルクレンチを購入する事をおすすめします。
何度も言うようですが、タイヤとホイールの管理は思っている以上に難しいことなのです。慎重に作業するようにして下さいね!
最近では、トルクレンチも安くなってるようですし、一つ持っておくと重宝するかと思います^^安心も買えますしね^^