- 2014-9-23
- Update 2019-2-1
- Maintenance
フロントブレーキパッド(ディスクブレーキ)交換手順
みなさまこんにちは!ミュンヘンのメカニックmasaruです!初めての来店ありがとうございます。
今回は、スズキ ワゴンRのピストンフローティングキャリパーのブレーキパッド交換のご用命を頂きました。
ブレーキング時に異音がしたり、ガタガタし感触がする場合はブレーキパッドもしくはローターの磨耗が原因となっている場合があります。
今回は、目視で点検しパッド残量がなくなっていることから、パッドを新品に交換する事をオーナーさんとお話しご理解いただけましたので、早速交換作業に移りたいと思います。
お客様によって予算や求める性能が違ってきますので、修理に移る前の対話って必ず必要だと思います。
注意すべきは、片方ずつ作業すべしこと!
今回のワゴンRだけでなくその他の車両についても同じことが言えるのですが、ブレーキパッドって簡単に取り外せるものもあり、複雑怪奇なものもあるのです。
で、両方をいっぺんにばらしてしまうと元の取り付け方がわからなくなるんですよ!
なんで、片方ずつ作業する事によって、取り付け方法がわからなくなったって時に、もう片方を見てみると取り付け方法の参考になるんですよね^^
画像に撮っとくって手もかなり有効です。
ブレーキパッド取り外し下準備
ブレーキパッドを交換する為には、キャリパーのピストンを押し戻す必要がありますが、ピストンを押し戻すとお察しの通りリザーバータンクにブレーキオイルが逆流し増えてしまいます。
なぜかと言うと、パッドが減ってくるとピストンが常時飛び出している状態になっているからです。さらに詳しく説明すると、パッドが目減りしてくるとピストンが出ている分だけブレーキオイルが減っていると理由からになります。
つまり、パッド残量が増える新品を取り付けるとピストンを押し戻さないと新品が入らなくなります。
ピストンを押し戻す作業をするとブレーキオイルが逆流し、エンジンルーム等にあふれだす事からこういった作業が必要になってきます。
先にブリーダーである程度抜いておくってのも一つの方法ですね!
ブレーキオイルは腐食性が高いので、なるべくエンジンルームにこぼさないようにする為の措置になります。(放っておくと錆の原因になりますよ!)
下準備として写真のようなオイラー又はスポイトで、少量余分なオイルを抜き取ります。しかし、全て抜かないようにしておきましょう。
エアを噛んでしまうことになります。目安としてはminの位置くらいにしておけば良いでしょう。
旧ブレーキパッド取り外し
作業がし易いように、ハンドルを切っておきます。ステアリングロックがかかる場合がありますので、左右のパッドを交換する際は、イグニッションONにしてステアリングをロックを解除して行うようにしましょう。
下側のボルトにレンチを掛け、ネジを緩め取ります。固着している場合があります。ボルトをなめてはいけないので、スパナは使わずにしっかりとボルトをかける事が出来るメガネレンチを使う方が賢明です。
固着している場合はボルトをなめないように、しっかり手で押さえて作業するようにしましょう!
後述しますが、このゴムキャップで覆われたねじ部分を緩めるとブレーキオイルが出てきます。
エア抜きの際はこのボルトを緩め作業するようにします。
下部のボルト(スライドピン)を外せばキャリパーを上に持ち上げる事が出来ます。
キャリパーを上に持ち上げ、消耗したパッドを取り外します。手でこじると簡単に取外せますが、固着している場合はマイナスドライバーなどで軽くこじってあげてください。
あまりチカラを入れてやると、パッド・ローターとも傷つけるので気をつけて下さい。
因みに、固着している場合はブレーキ性能は落ちていると考えても良いでしょう。ま、その為のメンテナンスではありますけどね^^
グリスアップする事でパッドがスムーズに動くようになり、感覚の鋭い方なら交換前後のペダルのフィーリングが変わっている事に気が付くはずです。
古いグリスを取り除く
キャリパーを固定している箇所が、カス状になっていると異音の原因になったり、パッドのスムーズな動きに支障をきたす場合がありますので、古くなったグリスはウエスやパーツクリーナーで綺麗に取り除いておきましょう。
パーツクリーナーを使う場合は、完全に乾燥させる為にエアブローやウエスで完全に乾燥させておきましょう。
パーツクリーナーは水分を呼び込む事もありますので、クリーナー使用後はしっかりウエスでふき取っておきましょう。
古いグリスが残っていてもさして問題はないのですが、気持ち的に古いグリスは全て落とすようにしています。
気持ちの問題ですけどね^^
この時に良いグリスは簡単に落とせますし、安価なグリスや誤ったグリスは固着してなかなか落とせません・・・。
良いグリスは2年経過しても固着せず、比較的簡単に除去できます。
この時にブーツ破れなどもしっかり確認しておきましょう!
ブレーキパッド交換時は、パッドやローターに目が行きがちですがブレーキを構成しているゴム部品にも目を向けてみましょう。
金属も疲弊しますが、ゴム部品はもっと過酷な状況に置かれています。
くまなく見渡し、ブーツの破れがないか?左右でパッドやローターの減りが大幅に違わないかを疑ってみましょう。
もし、ダストブーツに亀裂や破れがあるならばオーバーホールが必要です。
⇒ ブレーキキャリパーオーバーホールとダストブーツへのピストン挿入が簡単に出来る手順を公開します!
ブレーキピストンをSSTで押し戻す
新品のパッドは古いものより厚みがあります。ピストンを押し戻さないとブレーキパッドを挿入する事ができません。
その際に、画像のようなピストン押し戻し用のSSTを使うのですが、ピストンを押し戻した際にブレーキオイルがリザーバータンクから溢れる場合があります。
上記で、事前にリザーバータンクブレーキオイルを抜いておくのはこういった意味からきています。
ブレーキオイルは腐食性が高いのでなるべく、エンジンルーム内にこぼしたくないですね!
SST(特殊ツール)のピストン押し戻しツールを使い、ピストンを押し戻します。ピストンカバーを破らないように慎重に作業するようにしましょう。
メーカー品かアフターパーツかの選び方
安価な社外品もありますが、今回は純正品を採用。比較的高価な純正品か安価なアフターパーツを使うのかは、お客様の予算にも関係してきますが、パッドだけでなくそれに付属してくるパーツの劣化具合で決めています。
今回は純正品をチョイス!さすが純正品!社外品には付いてこないブレーキ鳴きを抑制するシムまであります。アフターパーツにはコレは付いてこない。
つまり、シムが劣化している場合は完全に元に戻すために純正品を用意します。
悪質な業者さんは、こういったシムが劣化しているにも関わらず、アフターパーツを使い、純正品と同様の請求をする事もあるらしいです。(噂ね。)
ブレーキ専用グリース塗布
パーツクリーナーとウエスを使って、カス状になったグリスを取り除きます。上記の画像と比べるとかなり綺麗になっているのが分かると思います。
ま、シムが新品てのもありますが、ゴム部分も徹底的にクリーニングしていきます。パーツクリーナーの液剤が残らないように、エアブローもしくはウエスで拭き取ってください。
過去のグリスが固体化しているならば、ドライバーやペーパーなどで削り落としておきましょう。
ピストン側に新しいシムを取り付け、鳴き止め防止のため、パッド専用グリースを塗布します。とりあえず、パッドが接地する面に薄く均一に塗り伸ばして行く事で、鳴き止めやブレーキの効きに大きな差が出てきます。
グリスはブレーキパッド面やローターに付着させないようにしましょう!
反対側のパッド背面部にもグリースを塗布します。この際に、薄く均一に塗りこむことが重要です。
塗りすぎるとグリースがはみ出し、パッドとローターの摺動部に付着する危険性があります。
下側の写真しかないのですが、上下のスライドピンにもグリースを塗ります。ブレーキをかけたときにスライドし、ブレーキパッドとローターの当たり面を均一に保つためには、スライドピンのグリース発布は必須です。
固着していなければ上下とも引き抜くだけで取れます。
ゴムシールが破れていたりすると、スライドピンが錆で固着し引き抜くのも困難になりますし、ブレーキの性能を100%発揮する事が出来なくなります。
最悪キャリパー交換になる可能性があります。車検時に「最低限でお願いします」といった方に多い症例ですね。
整備工場やディーラーさんでは、直ぐに交換したがるみたいなコメントも見受けられますが、安全上に問題があり、かつ、それで重大な事故に繋がっては車1台で得る事の利益なんてパーですよ。
あそこの整備は危険!だなんていわれたら終わりですからね。
整備工場やディーラーさんで交換を勧められるのは、本当にそれが必要な時なのです。
新品のパッドのこの部分上下にもグリースを塗ります。パッドがスムーズにスライドする為に行います。
パッドをスライドさせる為にはこの部分と、キャリパーのガイド部分との摩擦を軽減する為、必ずグリスを塗るようにしましょう!
グリスを新品にするとブレーキのフィーリングが激変するはずです^^
各部グリースを塗り終えると、真新しいパッドを取り付け、取り外しと反対の手順で組み上げます。
真新しいパッドに交換し、数年は持つ事でしょう。
さらに、グリスアップを施した事により、ブレーキ性能が各段に上がります。
しっかりとしたメンテナンスを施せば、パッド交換のビフォーアフターは体感出来るほど違います。
磨耗していたパッドが如何に危険だったのか感じ取る事が出来るはずです。
逆に言えば、少しずつ磨耗しブレーキ性能が落ちている状態から、本来のストッピング能力が発揮されるため、慣れるまでちょっと気をつけて運転しましょうね^^
ブレーキオイルのエア抜きで仕上げ
すべての作業が完了した後は、リザーバタンクにブレーキオイルを常時補充しつつ、ブレーキペダルを踏み代が出るまで数回踏み込みます。
ブレーキオイルを常時補充するのはエアを噛まないための措置です。
ブレーキペダルを10~15回ほど踏み込み、踏み代(足に感じるお重さ)が出ると、ブレーキオイルの量が落ち着くので、最初の吸い上げたオイルを戻しつつ、規定量にあわせれば作業完了です。
できれば、新品のブレーキオイルを注入してあげると完璧です。
さらに、エンジンをかけた状態でのペダルの踏み代が、スカスカになっていないか確認するようにしましょう。
ブレーキオイルの交換は、専用のブリーダーセットが必要です。
ドラムブレーキやディスク型問わずに、ゴムキャップで密閉されているエア抜き穴が用意されています。そこに、受け皿の代わりになる、ブリーダーセット画面一番下の商品リンク右側のタンクをセットしておきます。
さらに、ブレーキオイルを500ml~1Lほど補充した、タンクをブレーキリザーバタンクにセットしておけば、エアを噛む可能性が低くなります。
是非、利用してみてください。これがないと、ブレーキオイルのエア抜きはかなり時間がかかります。
完了後
お気づきになられた方もいらっしゃると思うのですが、ローターに錆が回り、パッドとの接触部の面積がなくなってます。本来ならばローターも交換したいところですが、今回は年式も古くなってきており予算の関係上作業を見送りました。
注意
ブレーキは車の中でも重要な部品になります。やり始めたは最後、途中でやめるわけにはいかなくなります、また、事故に直結する部位になりますので、専門的知識がない方は絶対に作業市内で下さい!
専門知識がない方は、自動車の修理およびカスタムはDIYで作業せず、必ず整備工場およびディーラーにて行うようにしましょう。
特商法でも述べているように、DIYでの作業による事故や、トラブルは当店では一切責任を持つ事は出来ません。
まとめ
ブレーキは車を止める唯一無二の存在です。DIYでの作業で慣れた方もいらっしゃるでしょうが、慣れていない方は絶対に手を出してはいけないと個人的には思っています。
車は走らないより止まらない方が怖いんです。
しかも、間違ったDIY作業では車を動かす事も出来なくなります。人の命がかかっている部分ですので、家臣Z¥せずに整備工場での作業を推奨します。