- 2015-6-10
- Update 2018-5-7
- Maintenance
日産車の一部車種のオルタネーターの異音
みなさんこんにちは!ミュンヘンのWeb担当mak utsunomiya(@munchen_stil)です!今回は、当店の常連さんでもあるプレサージュオーナーさんから、エンジンルームからただならぬカリカリ音(カラカラ?キンキン?)がするという事で、相談を頂きました。
少し前にベルト鳴きがするという話だったのですが、その後すぐに断続的にカリカリといった音もするようになり、数日後にはもうどうにもならないくらいの音の大きさになったとの事でした。
以前時々音がするという事はきいていたのですが、これが不思議な事にお店に来るとならなくなるというありがちな現象が起こってしまい、完全にはトラブルシューティングはできていなかったのですが、音が止まらなくなったならば原因の特定は容易です。
オルタネーターは発電機
オルタネーターと言うのはいわゆる発電機ですね。車には沢山の電装部品が使われています。エンジン内部にあるスパークプラグや、もっと身近なところで言うと、ヘッドライトやオーディオなんかも電気が無けりゃどうにもなりません。
バッテリーに充電するのもオルタネーターの仕事ですね。
そのようなあらゆる電装部品に電力を供給しているのがオルタネーターという事になります。バッテリーにも電力を送っているという事は、オルタネーターが壊れてしまったら、後はバッテリーに充電されている電力だけで走行しなければならなくなります。
エアコン使ったりヘッドライトを使ったりしてるとあっという間にバッテリーは上がってしまいます。
つまり、車を動かすためにかなり重要な部品という事になりますね。
カリカリ音は日産車に多いのかな?
以前にもニッサン セレナのオーナーさんが同様の症状でお店に来られていました。時々カリカリしといった音がするという事だったのですが、それ程継続的になっているわけでもなく、異音の発生が時々しか起こらないといった事から、お客様と相談しもう少し様子を見ましょうという事にしておきました。
その後数か月経過していますが、音は大きくなっていないようですし、とりわけ電力供給ができなくなっているわけでもなくそのまま乗られています。
プーリーがダメになると、ベルトのばたつきが起こることもあるようですが、今のところそういった症状も出ていません。
ま、早めの交換が一番望ましいのは言うまでもありませんが・・・。
その時にすでに、自動車用の聴診器で異音の原因がオルタネーターのプーリーに原因がある事はわかっていました。
しかし、今回のプレサージュは異音が出始めてから数日の間にカリカリ音が止まらなくなってしまいました。同じ故障個所でも車や走行状態によってあそのまま症状が進行しないものやあっという間にダメになるもの、色々あるんだな思いました。
ま、話がそれかけてしまいましたが、オルタネーターには特殊なものがありまして、ちょっと画像で説明したいと思います。
異音の原因は特殊な作りのプーリーが原因
メーカー問わず車にはエンジンの駆動力からベルトを介し様々な部品を動かしています。オルタネーターもその一つなのですが、他にもパワステ、ウォーターポンプ、ファンベルト等があります。
タイミングベルトは別として、それらを動かすために2,3本のベルトを使用してるものもあります。
しかし、今回のプレサージュを始め一部車種の中に、一本のベルトで全ての部品を動かしているというものがあります。ベルトの本数を減らす事で、部品点数を減らせスペースの確保や作業効率が良くなるというメリットがあり、最近ではこういった機構のエンジンが増えてきています。
こういった一本もののベルト機構の事を専門用語でサーペンタインタイプと言います。
で、この一本ものベルトはメリットも大きいのですが、様々な部品を駆動しているが故にベルトに大きな負荷がかかってしまうというデメリットも生じてきます。
ワンウェイクラッチ型の特徴
加速時や減速時などはエンジンの回転数に変動が生じますが、減速時には慣性力の強いオルタネーターはエンジン回転数は落ちていっても、それとは無関係に回転しようとし続けます。
つまり、エンジンは回転を低くしているのに、オルタネーターは勢いよく回っているという事になります。(現実に回転しているわけではないですが、そういった力が働いているという事です。)
そうなると、クランク(エンジン)とオルタネーターの間のベルトは張りが強くなり、逆にオルタネーターからクランクシャフト間のベルトにはゆるみが生じる事になります。
その状態のまま加速した時に、緩んだ方が急に引っ張られベルト鳴きの原因になります。ベルトが鳴くという事はベルトの寿命を短くしているという事にもなりますね。
そういった事が起こらないように、オルタネーターのプーリー部分にワンウェイクラッチと言う部品がついています。ワンウェイクラッチは、ベルトの張りを一定に保つため、正回転時にはロックし逆回転時にはロックせず空転するようになります。
つまり、エンジン回転よりオルタネーターの慣性力が強くなった場合にはロックしてベルトに一定の張りを与えるようになっています。
難しく書いてしまいました(書いてて自分でも?が出てきた^^)が、簡単に言うとベルトを守ったり鳴き防止の役割を果たす部品という事になります。ただ単にそれだけ^^
今回のオルタネーターのカリカリ音はワンウェイクラッチ内の部品が摩耗してきた事で起こっていたという事になります。
ネット上でもいろいろ調べてみましたが、日産車でこのタイプのオルタネーターを採用している車種にとっては持病のようなものみたいで、結構同様の症状が出ている車が多いようです。
オルタネーターをリビルト品に交換する手順
実はプーリー部分だけ交換は可能なんですが、特殊工具(SST)が必要であり、またオルタネーターの一部分が調子が悪いと言う事は他の部分にも故障がある事も考えられます。
ばらして点検してチェックして元にもどして・・・と言ってたら余計な出費に繋がってしまいます。
新品はえらく高いので、ここは信頼性のある新品同等の性能を持つリビルト品のAssy交換が望ましいと考えました。
オルタへのアクセスは簡単
プレサージュのオルタネーターはエンジンルームを開けるとすぐに見えます。アクセスは簡単です。車によってはどえりゃ~とこにあるものもあるので、そういった時は作業前に気合を入れなおす必要があります^^
ただし、ベルトが1本しかないのでかなり複雑に曲がりくねって取り付けてあります。外すのも取り付けるのも容易ですが、どういう風に通っているのかをしっかり覚えておきましょう。
バッテリーマイナス端子を外しておく
オルタネーターだけでなく電装系を触る場合は必ずバッテリーのマイナス端子を外しておきましょう。
ベルトを外す
ベルトは運転席側のタイヤ裏からアクセスしていきます。矢印部分にプラスチックカバーが付いていますので外していきます。
4箇所ほどプラスチックのピンで留まっているだけですので、簡単に外せるはずです。
下から覗くとベルトが複雑な通り方をしているのが見えます。どうやって通っているのかしっかりと記憶しておきましょう。
写真を撮っておくのも一つの方法です。かなり狭いのでカメラが入りにくいですが^^そういった場合にはメモしておいても良いでしょう。
テンショナーを緩めベルトを取外す
この機構をもつベルトの取り外しは意外と簡単です。画像のめがねレンチをかけている所がテンショナーになっていて、ベルトを自動で一定の強さで張ってくれるようになっています。
テンショナーは偏芯式になっているので、レンチを使って矢印方向にグイッと回すとテンショナーが回転しベルトが緩みます。
これで簡単にベルトを外すことが出来ます。
オルタネーターを外す
オルタネーターについているカプラーや、アース線を取外していきます。カプラーなど破損させないように慎重に取外していきます。
2本のボルトを外せばOK!
矢印部分にボルトが2本刺さっているだけですので、取り外しは簡単です。また、固定式なのでベルトを緩めるのはテンショナーのところだけで、オルタネーターをずらす様な機構にはなっていません。
ただ一つ問題点が・・・。
下部のボルトが長すぎて、他の部品に干渉してしまうので、少し面倒ですが周辺の部品を取外していきます。
ここまで外せば、下のボルトが外れます。上記で面倒と書きましたが時間的には数分で回りの部品を外せるはずです。
これがリビルト品
当たり前ですがピッカピカです^^コレを取り外しと逆の手順で取り付けていきます。注意点はオルタネーターの下部のボルトを先に差し込んで周辺の部品を取り付けることと、ベルトの取付け方法を間違えないようにする事です。
また、ベルトが各駆動部分の溝にきちんとはまっているか確認しておきましょう。ベルトがずれていると、走行中外れてしまい大変な事になります。
作業としては簡単な部類だと思いますが油断は禁物です。エンジンをかける前に、再度確認し問題点がないかしっかりと見ておくようにしましょう。
今回は、ベルトの磨耗も見られたので新品に交換しておきました^^
まとめ
オルタネーターは今回のようなワンウェイクラッチ内蔵型でなくとも、急に壊れたりするものです。しかも、異常がある場合にもなかなか症状として現れにくく、急にエンジンがかからなくなったとか、只のバッテリー上がりかと思っていたら、オルタネーターが故障していたなんて事も良くあります。
これから、エアコンをかけてガンガンかけてオルタネーターにも負担がかかる季節にもなってきます。バッテリーとともに、電圧測定器などでオルタの発電チェックをする事も可能ですので、しっかりと発電できているか整備工場などでチェックしてもらってもいいかもしれませんね。
完全に壊れてしまってバッテリーまで上げてしまったら余計な出費にもなりますしね。事前にチェックしておく事はかなり大切な事です。